結婚相談所 / 条文にない場面を数える
結婚相談所が倒産・廃業したら、払ったお金はどうなるのか——条文にこの場面はありません

この記事には広告を掲載していません。 公表資料と条文を読んで数えただけの記事で、リンク経由の報酬は発生しません。当サイトの他の記事には広告を含むものがあります。
- 帝国データバンクの公表資料(結婚相談所の倒産・休廃業/2024年2月6日発表)
- 特定商取引法と同施行令の全文(e-Gov法令APIの原文XML)
- 2026年に実際に終了したサービスの公式告知(インターネットアーカイブ)
- 破産法・民事再生法(あたっていません。返ってくるかどうかは書けません)
- 2024年以降の倒産件数(後続の集計を見つけられませんでした)
- 個別の相談所の財務状況
相手のほうが先にやめたら、払ったお金はどうなるのか。 当サイトはこれまで、やめるのは自分の側だという前提で書いてきました。逆の場合を、条文と公表資料から確かめます。
01先に結論
- 件数は公表されています。 2023年の結婚相談所の倒産は11件、休廃業・解散も11件(帝国データバンク)
- 特定商取引法には、事業者がやめる場合の規定がありません。 「事業の廃止」「解散」「破産」「履行不能」は全文で0件
- だから、そのときどうなるかは条文ではなく、その事業者が出す告知に従うことになります
- 告知で先に見るのは終了日ではありません。返金の受付期限のほうです。 終了日より前に閉まっていた実例があります(4節)
- 契約の前後にできることが、条文に1つだけあります。 5万円を超える前払いなら、業務と財産の状況を書いた書類の閲覧を求められます(5節)
02どのくらい起きているのか
まず数から見ます。帝国データバンクが2024年2月6日に公表した集計です。
| 区分 | 2023年 | 公表元の注記 |
|---|---|---|
| 倒産 | 11件 | 年間の倒産件数として初めて10件を超え、過去最多を更新 |
| 休廃業・解散 | 11件 | 過去最多の水準 |
集計対象は負債1000万円以上の法的整理による倒産、および休廃業・解散となった企業で、集計期間は2024年1月31日までです(同社の公表資料より)。
合わせると、その1年で20を超える会社が市場から出ています。
ただし、この数字には注意が2つあります。
- 発表は2024年2月で、対象は2023年です。 この記事を書いている2026年8月から見て、2年半前の数字になります。それ以降の集計は、編集部では見つけられませんでした
- 負債1000万円未満の廃業は入っていません。 個人で開いている小さな相談所は、この統計の外にあります
ですから「増えている」と言えるのは2023年までの話で、いま増え続けているかどうかは、この資料からは分かりません。 分かるのは、年に20件前後という規模で実際に起きているということです。
「廃業率」は出せません — 分母が公表されていない
率を出すには分母が要ります。事業者が何社あって、そのうち何社がやめたのか。その分母が見つかりませんでした。
帝国データバンクが公表しているのは件数の集計で、編集部が開いた2つの資料——レポートのページと同社のプレスリリース——には、事業者の総数の記載がありませんでした(2026年8月14日、編集部が画面で確認)。
分母になりそうな数字は、1つだけ見つかります。IBJ(日本結婚相談所連盟)が公式サイトに出している加盟相談所の数です。
全国4,500社超
(株式会社IBJ 公式サイト。同じページに会員数 約10万人・2024年12月末時点とありますが、加盟相談所数のほうには時点の明示を見つけられませんでした。2026年8月14日、編集部が画面で確認)
ただし、この2つは割れません。
- 帝国データバンクが数えているのは全国の結婚相談所の企業で、連盟に入っているかどうかを問いません
- IBJの4,500社超は、その連盟に加盟している店だけです
分子と分母で数えている範囲が違います。22 ÷ 4,500 のような計算をすると、数は出ますが意味がありません。これは成婚率の記事で扱っているのと同じ形の誤りです。
ですから、この記事が書けるのは率ではなく件数までです。
「どこが倒産したか」の一覧は作れませんでした
社名を知りたい、という探し方もあります。公表資料から一覧を作ることはできませんでした。
- 帝国データバンクの公表資料は件数の集計で、社名は載っていません
- この記事が名前を書けるのは、その会社自身が終了を告知した場合だけです。04節で扱っているゼクシィ縁結びエージェントが、それにあたります
「倒産ラッシュ」という言い方も見かけます。確かめようとしましたが、2023年より後の、結婚相談所だけを数えた集計を編集部は見つけられませんでした。 増えているのか落ち着いたのかを言うための材料が、いま手元にありません。
自分が契約する相手の状態を知りたいなら、業界全体の率より確実な道が条文にあります(05-1)。
03条文は、この場面を用意していません
当サイトは契約条件を条文から確かめる書き方をしています。ここでも引きに行きました。結果は、何も無い、です。
e-Gov法令APIで取得した特定商取引法の全文(タグを除いて273,302字)を検索しました。
| 語 | 件数 |
|---|---|
| 事業の廃止 / 事業を廃止 | 0件 |
| 解散 | 0件 |
| 破産 | 0件 |
| 履行不能 | 0件 |
| 承継 | 1件 |
(2026年8月7日および8月13日確認)
中途解約を定めた第49条の主語は「特定継続的役務の提供を受ける者」です。解除するのは、こちら側だと書かれています。
この法律が用意しているのは、自分からやめるときの精算です。相手がやめる場合にどうなるかは、条文の守備範囲の外にあります。
だから、そのときに読むものは条文ではありません。その事業者が出す告知です。
04ゼクシィ縁結びエージェントが2026年6月30日に終了しました——ただし、これは倒産ではありません
ゼクシィ縁結びエージェント。2026年6月30日をもって、サービスを終了しました。
「ゼクシィ縁結びエージェント」は、2026年6月30日をもちまして、サービスを終了させていただきます。
(同サービス公式サイトのお知らせ。2026年7月6日時点のインターネットアーカイブから、2026年8月7日に編集部が取得)
これは倒産ではありません。 サービスの終了です。倒産・休廃業・サービス終了は、別のことです。 ただ、利用していた人から見れば、契約していた先が無くなるという点は同じになります。
返金の窓口が、終了日より10日早く閉まっていました
同じ告知に、問い合わせの受付期限が2つ並んでいました。
| 窓口 | 受付期限 |
|---|---|
| 返金や手続きに関するお問い合わせ | 2026年6月20日 |
| お客様相談室・サービスデスクのお問い合わせ | 2026年7月20日 |
返金の窓口が、サービスの終了より10日早く閉まっています。 6月25日にまだ活動していた人が、そこで返金を相談しようと思っても、受付は終わっていたことになります。
そして2026年8月7日の時点で、このサービスの公式ドメインはドメインパーキングを返します。告知そのものが、生きたウェブから消えています。 読めるのはアーカイブだけです。
だから終了の告知を見たとき、先に探すのは終了日ではありません。返金の受付期限のほうです。 終了日より前に置かれていることがあります。
05契約する前と、しているあいだにできること
起きてからできることは、告知に従うことしかありません。起きる前にできることが、条文に1つだけあります。
5万円を超える前払いなら、書類を見せてくださいと言えます
特定商取引法 第45条です。
役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供に係る前払取引を行うときは、主務省令で定めるところにより、その業務及び財産の状況を記載した書類を、特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければならない。
そして2項に、こちら側の権利が置かれています。
特定継続的役務提供に係る前払取引の相手方は、前項に規定する書類の閲覧を求め、又は同項の役務提供事業者若しくは販売業者の定める費用を支払つてその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
「前払取引」の線引きは施行令にあります。
法第四十五条第一項の政令で定める金額は、五万円とする。
まとめると、こうなります。
- 役務の提供に先立って5万円を超える金銭を受け取る取引なら、事業者は業務と財産の状況を書いた書類を事務所に備え置く義務を負う
- その相手方は、閲覧を求められる。 費用を払えば謄本・抄本の交付も求められる
結婚相談所の入会金や登録料は、活動が始まる前に払うことが多い費用です。その額が5万円を超えるなら、この条文の要件に当たりうることになります。当てはまるかどうかは契約の組み立て方によるので、断定はしません。
面談で聞くなら、この言い方が短くて済みます。「前払いになる分が5万円を超えるので、法45条の業務及び財産の状況を記載した書類を見せてください」。条文の番号を出すと、話が早いことがあります。
断られた場合にどうなるかまでは、この記事では書きません。備え置く義務は条文にありますが、拒まれたときの手順を編集部は確認していません。
よくある質問
結婚相談所が倒産したら、払ったお金は返ってきますか
この記事では書けません。 返還がどうなるかは破産法や民事再生法の話で、編集部はその条文にあたっていません。特定商取引法の側には、事業者がやめる場合の規定が1つもありません(3節)。
結婚相談所の倒産は増えているのですか
2023年までは増えていました。 帝国データバンクの公表資料で、2023年の倒産は11件、年間で初めて10件を超えて過去最多を更新しています。休廃業・解散も11件。ただし発表は2024年2月で、それ以降の集計は編集部では見つけられませんでした(2節)。
倒産と廃業とサービス終了は同じですか
別のことです。 帝国データバンクの集計でも「倒産」と「休廃業・解散」は分けて数えられています。2026年に終了したゼクシィ縁結びエージェントは、倒産ではなくサービスの終了です。ただし利用者から見れば、契約先が無くなる点は同じになります(4節)。
終了の告知が出たら、まず何を見ればいいですか
終了日ではなく、返金の受付期限です。 2026年の実例では、返金の窓口がサービス終了日より10日早く閉まっていました。告知そのものが後からウェブ上から消えることもあるので、見つけた時点で保存しておくほうが確実です(4-1)。
相談所の経営状態を、契約前に確かめる方法はありますか
条文に1つあります。 役務の提供に先立って5万円を超える金銭を受け取る取引なら、事業者は業務と財産の状況を記載した書類を事務所に備え置く義務があり、相手方は閲覧を求められます(特定商取引法45条1項・2項、同施行令27条)。5-1に条文をそのまま載せました。
結婚相談所の廃業率はどれくらいですか
率としては出せません。 帝国データバンクは件数(2023年は倒産11件・休廃業解散11件)を公表していますが、編集部が開いた同社の資料には事業者の総数がありませんでした。分母になりそうなIBJの「全国4,500社超」は連盟の加盟店だけを数えたもので、件数のほうは連盟の内外を問いません。範囲が違うので割れません(02-1)。
最後に
この記事で確かめられたのは、3つです。年に20件前後という規模で実際に起きていること。条文にはその場面が用意されていないこと。そして、起きる前にできる確認が1つだけ条文にあること。
返ってくるかどうかは書けませんでした。破産法にあたっていないからです。書けないことを書かないのが、このサイトの決まりです。
自分からやめるときの計算は、条文が上限まで決めています。そちらはやめるときの記事と計算ツールにあります。相手がやめる場合と違って、こちらには条文があります。
この記事が根拠にした原典
読者が開ける出典
| 内容 | 原典 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 2023年の結婚相談所の倒産11件・休廃業解散11件/「初めて10件を超え過去最多を更新」/集計対象(負債1000万円以上の法的整理による倒産、および休廃業・解散)/集計期間(2024年1月31日まで) | 株式会社帝国データバンクの公表資料(2024年2月6日発表) | 編集部が2026年8月13日に取得。件数・注記・集計条件はすべて公表資料の記載どおり |
| 特定商取引法に「事業の廃止」「事業を廃止」「解散」「破産」「履行不能」の語が無いこと(いずれも0件、「承継」のみ1件) | 特定商取引に関する法律 全文 | e-Gov法令APIで取得した原文XMLからタグを除いた273,302字を全文検索。2026年8月7日・8月13日確認 |
| 第49条第1項の主語が「特定継続的役務の提供を受ける者」であること | 特定商取引に関する法律 第49条1項 | 同上。原文で確認 |
| 前払取引における書類の備置義務と、相手方の閲覧・謄本抄本交付の請求権/「前払取引」が5万円超であること | 特定商取引に関する法律 第45条1項・2項/同施行令 第27条 | 同上。3つとも原文を引用 |
| サービス終了日(2026年6月30日)と、返金・手続きの問い合わせ受付期限(2026年6月20日)/お客様相談室の受付期限(2026年7月20日) | 「ゼクシィ縁結びエージェント」公式サイトのお知らせ | 編集部が2026年8月7日に取得。公式ドメインは同日時点でドメインパーキングを返すため、2026年7月6日時点のインターネットアーカイブから原文を確認 |
取れなかったもの(埋めていません)
- 倒産したときにお金が返るかどうか。 破産法・民事再生法にあたっていません。1節でも6-1でも、書けないと書いています
- 2024年以降の倒産件数。 帝国データバンクの後続の集計を見つけられませんでした。「いま増えているか」は書けません
- 負債1000万円未満の廃業。 統計の対象外です。小規模な相談所の実数は分かりません
- 閲覧を断られたときの手順。 備置義務は条文にありますが、拒まれた場合にどうするかは確認していません
- 加盟する連盟がある相談所が閉じた場合、会員がどう扱われるか。 連盟の公開資料から見つけられませんでした
この記事は公表資料と法令の条文に基づく整理であって、個別の契約についての法的助言ではありません。
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